リナムは膝から箱の上に降りた。


――ほら、ねえ、早く


「はいはい」


ラドリーンはクスクス笑いながら、靴を脱いで足を箱の上に乗せた。

それから、リナムを落とさないように静かに体を横向きに倒す。

片手を腕枕にして落ち着くと、リナムが胸元にすり寄って来た。


――どう?


けして寝心地がいいとは言えなかったが、ラドリーンは『さっきよりずっといい』と答えた。


――そうでしょ。目をつぶって。子守り歌を歌ってあげる


ラドリーンは言われるままに目を閉じた。

リナムが甲高い声で子守り歌を歌う。

ちょっと調子外れな歌声を、ラドリーンは口元に笑みを浮かべて聞いていた。

そのうち静かになったので、薄目を開けて見て見ると、リナムはすやすやと眠っていた。

ラドリーンは可笑しそうに笑い、リナムの背を撫でた。

柔らかな毛が指をくすぐった。

これからどうなるにしても、リナムだけは守らなければ。


ラドリーンは目を閉じた。


波の音が聞こえる。


ラドリーンにとっての子守り歌だ。