「どうすればいいの? 一体どうすればいいの?」

ラドリーンは繰り返し言い続けた。


王女だったなんて知らなかった。

王位なんて、もっと知らない。

城から出たいと思っていた。

けれど、それは自由がほしかったからで、別の不自由に飛び込むためじゃない。

揺れる船の上で絶え間なく吐き続けるためでもない。

断じて違う。


――落ち着いて、ラドリーン

膝の上に陣取ったリナムが小声で言った。


「だって……」


リナムだってこんな事に巻き込むつもりはなかった。

城に置いて行こうとしたのに、リナムはしがみついて離れなかった。

『二人ともいなくなったら誰がバードに知らせるの?』と説得して、リナムはやっと離れた。

ところが船に乗ると、〈侍女〉がリナムを抱いて来てラドリーンの膝に乗せた。


「やっと見つけました」

〈侍女〉はニコリともしないで言った。


あり得ない。


「バードは心配するかしら?」


――たぶんね。でも、大丈夫だよ。ネズミを捕まえて伝言を残したから