「兵を挙げると言っても……」

ラドリーンは戸惑ったように言った。

一体どこの誰がラドリーンと共に戦ってくれるというのだ。


「案ぜられませぬよう。貴女をここにお連れした時わたしは一介の修道騎士でしたが、今は司教であり聖騎士団を率いる身。わたしと部下達が戦います。貴女のため、正義のために」

テオドロスは薄茶色の瞳で真っ直ぐにラドリーンを見た。

「貴女を女王にしてみせる」


女王?

ラドリーンは青ざめた。


「けれど……けれど、兄がいるのに?」


「兄上はここにはおられません。しかし、貴女はここにいる」

テオドロスはラドリーンの片手を取ったまま床に降り、ひざまずいた。

「挙兵のご命令を、我が王女」


冷たい唇が手の甲に落ち、ラドリーンは『真実』がもたらした事の重大さに震えるしかなかった。