「口をきけぬ者を集めたのかと思っておりましたが?」

ラドリーンは皮肉っぽく言ってみた。


「貴女の安全のためです。ある種の者達が貴女を邪魔にし、お命を狙っていましたから」


ラドリーンは息を飲んだ。

恐怖からではない。

むしろ期待から。

今まで固く閉じられていた『真実』という扉が開かれようとしている。

テオドロスは全てを語ってくれるのだろうか?


「司教様」

ラドリーンは逸る気持ちを抑えながら言った。

「命を狙われるとは――わたしは何者なのですか?」


「貴女はハルド家の姫君、つまりこの国の王女様です」

テオドロスは静かに語った。

「10年前、お父上である王が亡くなられ、王位をめぐる争いが起きました。貴女はその騒ぎに巻き込まれ、暗殺されかかっていたのです。わたしは貴女の母上から貴女を託されました」


母上……

ラドリーンは記憶を辿ろうとした。

しかし、何も浮かんで来ない。


「母は今、どこにいるのですか?」