テオドロスと名乗る男は、小さなテーブルを挟んだ反対側に座った。

ラドリーンは<侍女>を目で探した。

<侍女>はラドリーンと男が座るのを見届けると、壁際に置かれた椅子の一つに腰掛けた。

少なくとも見知らぬ男と二人っきりになるわけではないらしい。


「何からお話しましょうか」


テオドロスはテーブルの上で両手の指を組んで、ラドリーンを真っ直ぐに見た。


「司教様――」

ラドリーンはそう呼びかけた。


テオドロスが<侍女>に鋭い一瞥をくれた。

まずかっただろうか?


「あなたは司教様だと伺いましたが?」

ラドリーンは言葉を継いだ。


「その通りです。他に何をお聞き及びですか?」


「何も」

ラドリーンは首を横に振った。

「ここでは誰も、何も話してくれません。お会いする方の名前くらいの他は」


テオドロスは苦笑いを浮かべた。


「申し訳ありません。この城に仕える者の大多数は真実を知りません。ですから話しようがないのです」