――ラドリーン、船が着いてる。あいつの船だよ

ネズミ探しから帰って来たリナムが、興奮気味に言った。


「あいつ?」

ラドリーンはリナムを膝に抱き上げた。


――ほら、喋られなくなる呪い(まじない)をかける奴さ


ああ……月に一度来るという?


「リナムは隠れていた方がいいんじゃない?」


――ここには来ないから大丈夫


「そうね」

ラドリーンはリナムの背中を撫でた。


訪れる者もない退屈な日々。

それももうすぐ終わりだ。

アスタリスは、一月(ひとつき)以内に幻獣たちを全てソフォーンへ移すと言っていた。

その後でラドリーンとリナムもここを去るつもりだ。

ラドリーンが一緒に行くと言うと、リナムはとても喜んだ。

『あっちへ行ったら鱒でもいいや』と言ったくらいだ。

ラドリーンとしては鰊でも鱒でも構わなかったが、それを誰が調理するのか不安だった。

料理などした事もない。