ラドリーンは、ぎこちなくキスを返した。

暗くて見えなかったが、アスタリスの唇が微笑むのが感触で分かった。


「俺と行こう」

アスタリスは囁いた。


ラドリーンは、アスタリスの肩をギュッとつかんだ。


「ここに何があると言うのだ?」


どこまでも続く海と空があるばかりだ。


「ここに誰がいる?」


<侍女>と<影>たち。

ラドリーンに少しも関心を示さない者がいるだけだ。


「あなたと行けば、何があると言うの?」

ラドリーンも囁くように言った。


「どこまでも続く空と大地。幻獣たちと俺に外見が似た者たち」


「幻獣って? この間の光るトカゲのようなもの」


「そう。あれはサラマンダー。他にもドラゴン、エーンバル、フェニックス、ユニコーン。全て魔法の基(もとい)たる生き物達だ」


アスタリスは詩のようなものを口ずさんだ。

その合間にラドリーンの首筋をついばむ。