「気に入られなかったのなら仕方がないな」


「気に入らないとかじゃなくて……全てが急過ぎて分からないの。こ、これって姦通じゃないわよね?」

ラドリーンは泣きそうな声になった。


「どこでそんな言葉を覚えた?」

アスタリスは可笑しそうに言った。


「祈祷書に書いてあるわ。罪の一つよ」


「意外に信心深いのだな。礼拝堂から蝋燭をくすねるのはいいのか?」


「あれは借りたの――どうして知ってるの?」


「お前は絶対に悪い事はできないな。いいか、お前も俺も他に恋人がいないのだから姦通ではない」


「本当?」


「愛し合う事は罪ではない。誰かを裏切って、傷つけて愛の真似事をするならば、それは罪だ」


ラドリーンは身体の力を抜いて、アスタリスの胸に頬を寄せた。


「俺を気に入ったと思っていいのかな?」

「嫌いじゃない」

「それでよしとしよう、今は」


アスタリスはラドリーンを仰向けにすると、そっとキスをした。

額に、こめかみに、頬に、唇に。