額に何かが触れる感触で、ラドリーンは目を覚ました。


いつもと何かが違う。


ラドリーンは何度も瞬きをした。

誰かの暖かい腕にすっぽりと包まれている。


「アスタリス?」

「何だ?」


闇を通して、アスタリスの声がした。

眠りに落ちる前の記憶が一気に蘇った。

身体を強張らせると、大きな手が宥めるようにラドリーンの髪を撫でた。


「どうして?」

ラドリーンは小さな声で聞いた。

「わたしに何をしたの?」


「ラドリーン、命のある者はみんなああする。あのようにして愛し合い、命を未来へと繋いでいく。鳥も魚も、形は違えど花でさえも」


「わたし達は愛し合ってる?」


「少なくとも、俺はお前を愛おしいと思っているが?」


お前はどうだ?――と、問われた気がした。


「答えられないか」

アスタリスの声は、微かに笑いを含んでいた。