「雛にとっては、鳥の巣など小さくてつまらぬ世界でございましょうね」

<侍女>は独り言のように呟いた。

「美しく見える空は、食うか食われるかの残酷な世界ですのに」


呆気に取られるラドリーンを残し、<侍女>は部屋を出て行った。


――オイラも雨が近いと思う


リナムが何度も顔を擦りながら近寄って来た。


「猫が顔を洗うと雨が降るって、迷信だと思っていたわ」

ラドリーンは微笑んだ。


――洗ってるんじゃないよ。でも天気が悪くなる時に、必ずムズムズするんだ。耳の後ろ掻いて、ラドリーン


ラドリーンが手を伸ばして耳の後ろを掻いてやると、リナムはウットリと目を細めた。


「リナムはここが好き?」

ラドリーンは優しく聞いた。


――好きだよ。ニシンがいっぱいあるし


「好きなのに、別の場所に帰って行くのね」


――<扉>が閉まっちゃうからね


「それは何? バードも<扉>の話をしていたわ」