「天候の前兆をお読みになられるのですか?」


<侍女>の声は微かに震えていたが、ラドリーンは気にも止めずに頷いた。


「海の近くで暮らしていれば、誰だって多少は読み取れるでしょう?」


「そうでございますね」

<侍女>は少しためらってから、再び口を開いた。

「姫様はこの城を出たいとお思いですか?」


ラドリーンは目を丸くした。

<侍女>に気持ちを聞かれたのは初めてだ。


「そうね……出てみたい、かしら?」

ラドリーンは慎重に答えた。


「左様でございますか」


<侍女>は頷くと、いつものように部屋の中を整えて歩いた。

全ての物が寸分の狂いもなく元の位置に戻されているかのようだ。


最後にわたしの向きも直すのかしら。


ラドリーンは皮肉っぽく思った。


仕事を終えると、<侍女>はいつものように一礼をして部屋を出て行こうとした。

が、扉にかけた手が止まった。