「ずるい」

ラドリーンは涙声で言った。

「ずっと放っておいたくせに」


「呼べばよかったのだ」

アスタリスの声は笑みを含んでいた。

「俺の名を呼べ、ラドリーン。すぐに駆け付けてやる」


ラドリーンはアスタリスの胸にすがりついた。


「アスタリス……」

「そうだ」


柔らかなキスが、ラドリーンの唇を覆った。


驚き、戸惑い、カタカタと震えるラドリーンの身体を抱きしめて、アスタリスはラドリーンの唇を奪い、脈打つ細い首筋にもキスを落とした。


「お前が望むなら、声が枯れるまで歌ってやろう。古(いにしえ)の歌だろうと、他人の歌だろうと」

アスタリスの声が肌を震わせる。

「だから、行こう」


「どこへ?」

ラドリーンは震える声で尋ねた。


「<扉>の向こうへ。この世界の全てを捨てて俺と行こう、夜空の瞳のラドリーン」