「彼はどこ?」


ラドリーンは腰に両手をあてて、黒猫を問い詰めた。

リナムは目を大きく見開いた。


――彼って?


「分かってるくせに。アスタリス――バードの事よ。どうして来ないの?」


昨夜でもう五日、姿を見せていない。


――バードのやる事なんてオイラには分かんないよ

リナムは、決まり悪げに前足で顔を擦った。

――でもこの間来た時、どうしてこんな事をやってるんだろって言ってた


「こんな事って?」


――それは、その、つまり……ラドリーンに歌を聞かせる事さ


ラドリーンは瞬きを何回かした後、額に手をあててた。


「あ……ああ、そうね。もちろんそうよね」


急に肩を落として椅子に座り込んだラドリーンに、リナムは心配そうな目を向けた。


――どうしたの?


「バードの歌はお仕事なのよね」