「何だ?」

アスタリスは笑った。

「お前の知りたがりも困ったものだな」


「だって、ここでは誰もわたしの疑問に答えてくれないんだもの――」

ラドリーンは欠伸をして、横になった。

「『アルメリアの呪われた玉座』って歌を知ってる?」


「聞いた事はあるが……それは吟遊詩人(ミンストレル)の歌だろう?」


ラドリーンはコクンと頷いた。


「冬至祭(ユール)の時に来た吟遊詩人が歌っていたわ」


――オイラもそれ聞いたよ

リナムが、ラドリーンの腕の下でもがきながら言った。

――本当の王子様が帰って来るまで、誰も座れない椅子なんだって


「そうそう。王様が戦死した後、王妃様が玉座に呪いをかけたの」


――そんなのとっとと捨てて、別の椅子を作ればいいのに


「えっ! ダメよ!」

ラドリーンはリナムの上から腕を退けた。

「それじゃあ誰でも王様になれちゃうじゃない」