「じゃあ王様の他にも、霧の森の向こうから人が来たの?」


歌が終わると、ラドリーンは膝の上のリナムを撫でながら尋ねた。


「ああ」


アスタリスがラドリーンの部屋を訪れるようになって、七夜が過ぎていた。

ラドリーンはリナムと一緒に寝台の奥に座り、寝台の端に腰掛けたアスタリスの歌を聞くのが日課になっていた。


「その人達はどうしたの?」

「帰った者もいれば、この地で死んだ者もいる」

「そうね……王様の名前を忘れるくらい年月が経っているんですもの。きっとその王様だってもういないわ」

「こことソフォーンでは時の流れが違う。神王はまだ生きている――はずだ」

「あなたはいつここに来たの?」


竪琴の調弦をしていたアスタリスが、ラドリーンの方を見た。


「さあな。覚えていない。何にせよ、俺がこの地に残った最後のバードだ」

「その髪はどうして色が変わるの?」

「光の加減だろう」

「神王もそうだったのでしょう? あなたの種族ではよくある色?」

「ありふれてるよ」

「ねえ」