「いいや」

「明後日は?」

「リナムへの用は終わった」

「わたしの用が残ってる」


アスタリスは怪訝そうな顔をした。


「歌の続きを聞かせてくれると言ったわ」

「いずれ、な」

「あなた達が去ってしまう時に? それともわたしを適当な言葉で騙したの?」


アスタリスはフッと笑った。


「バードの言質(げんち)を取るとは賢い娘だな。そして愚かだ」


アスタリスはサラマンダーの方に手を伸ばした

サラマンダーはアスタリスの指先を這い、肩へと上った。


「わたしのどこが愚かなの?」


「自ら面倒事に首を突っ込む者を、愚かと言わずに何と呼ぶ? せっかく見逃してやろうと思っていたのに――バードになる者は、生れつき美しいモノを好む。油断すればお前も俺のねぐらにしまい込まれるぞ」


それでもまだ歌をねだるのか?


無言の問い掛けが宙に漂う。


「続きを聞かせて」

ラドリーンはキッパリと言った。


「よかろう。では明後日の夜、今夜と同じ時に」