「時が来れば、この地を去らねばならぬ」


ラドリーンは、怒っているリナムを抱いて宥めた。


「あなたも?」

「俺も」


どうという事はない――ラドリーンはそう思った。

元の暮らしに戻るだけだ。


「でも、その時まではリナムといていいのでしょう?」


アスタリスは頷いた。


「そいつが望むのなら」


――望む、望む、ぜーったい望んでるから!

リナムが毛を逆立てながら言った。


「そのうち迎えに来る。その時は、しのごの言うなよ」

アスタリスは立ち上がると、竪琴を背負い直した。


「待って!」

ラドリーンは叫ぶように言った。


アスタリスが振り向いた。


「何だ?」

「明日も来る?」