「お目覚めですか?」


帳(とばり)の向こうから<侍女>の声がする。


ラドリーンはゆっくりと瞼を開いた。

「今、起きたわ」

まだ眠気の残る声で返事をして起き上がった。


何だか体がだるい。


朝日の差し込む部屋の中で、<侍女>がテキパキと洗顔用の水を用意していく。

ラドリーンがどんな気分だろうと、身支度は日課の通り出来上がって行く。

ラドリーンは服を着て、椅子に座り、いつものように<侍女>に髪を梳かしてもらった。

真っ直ぐ前に顔を向けていたラドリーンの目に、暖炉の前で丸くなっている猫が映った。


そうだ。


昨日の夜、秘密の通路を通って海の洞窟に行った。

色の変わる髪をした不思議な男に会った。

猫が立って、猫が喋った。


あれは夢だったのだろうか?


「リナム」


そう。

リナムという名だった。