――ううん、いるよ

リナムが反対側の横から得意げに言う。

――って言うか、普段はいないけど。満月の日に必ず来る。ラドリーンはお城の奥にしかいないから分からないんだよ


「そいつは毎月毎月、何しに来るんだ?」


――分かんない。でも、ラドリーンがどうしてるか必ず聞く


「口のきけない使用人に?」


――一人だけ喋れる人がいるの


<侍女>の事だ。


アスタリスは腕を組んで、少し考え込んでいるようだった。

ラドリーンは横目でそっとアスタリスを窺った。

珍しい色の髪が気になる。

ラドリーンの目の端に、輝く銀の髪が映った。

簡素な灰色のチュニックの肩にこぼれた真っ直ぐな髪は、毛先にいくにしたがって緑色に変わっていた。


どうして色が変わるのだろう?


ぼんやりと見とれていると、不意にアスタリスが横を向いた。

まともに目が合った。

ラドリーンは真っ赤になって顔を背けようとした。