ラドリーンは言われた通りに寝台に腰掛けた。

寝台の上のマットは藁よりももっと柔らかいものを詰め物にしているらしく、ふかふかとしていた。

男は猫をテーブルの上に置き、マントを脱いで椅子の背にかけた。

続いて背中に背負っていた小振りの竪琴を外し、後ろで一つに髪を結んでいた革紐を解いて頭を振った。

肩より少し下までの、銀色だと思った髪は、俯いて椅子に座った時は銀青色に、楽器を手に顔を上げた時は夕日のようなオレンジ色の輝きに――角度が変わる度に次々と色を変えた。


まるでオーロラだ。


男は弦を掻き鳴らし、深みのある豊かな声で歌いだした。


歌が、暖かな風のようにラドリーンを包み込んだ。


短い歌が終わるとテーブルの上の猫は身震いして床に飛び降り、二本足で立ち上がった。


――あー、あー。ああ、喋れる! ありがとう、バード

猫が嬉しそうに言った。

――喉がカラカラだよ。ねえ、ミルクない?


「やれやれ」


男は竪琴を置いて立ち上がり、壁の棚から水差しとカップを取り出した。

水差しからミルクを注ぎ、猫に差し出す。