ただし、壁も暖炉も滑らかな純白の石でできていた。

何故か明るい。

暖炉に火は入っていたが、他に蝋燭があるふうでもない。

部屋の隅には丸い大きな木のテーブルと、背もたれのついた木の椅子が一脚だけある。

空のタペストリーがかかっていた場所には、黒地に金の糸で織られた奇妙な生き物のタペストリーがあった。


後ろで扉の閉まる音がした。


「それはドラゴンだ」

男がラドリーンの視線の先を追って言った。


「ドラゴン?」


「金脈のある山の洞窟に住む、最大にして最強の幻獣」


幻獣って何だろう?


ラドリーンは、問い掛けるように男の方を見た。


「翼を広げれば空も飛べる」


「鳥なの?」


「いいや。実物を見なきゃピンと来ないか」

男は薄く笑うと、顎で石の寝台を指した。

「そこに座っていろ。先にこいつの呪(まじな)いを解いてしまうから」