ラドリーンは、枕の下から小さな袋を引っ張り出した。

中には通路探険に必要な物が入っている。


蝋燭、持ち歩き用の取っ手がついた燭台、火打ち石、麻の紐が一巻き――

後は古いマントを羽織ればいい。


ラドリーンが蝋燭に火を燈すと、猫が足元で小さく鳴いた。


「しーっ! 通路に入るまで喋っちゃダメ」


ラドリーンは部屋の扉を開け、様子を伺った。

廊下は真っ暗で静かだった。


「おいで」


ラドリーンと猫は、誰に見咎められる事もなく図書室に着いた。

書棚の上に昼間置いておいた蝋燭があったので、それを袋に入れ、書棚の仕掛けを動かす。

蝋燭の炎に照らされた空っぽの部屋は、日中とは違って不気味な感じがした。

ラドリーンは壁の窪みに燭台を起き、昼間と同じように石台の上に上がった。

そこにはもう石の階段はない。

壁のタペストリーの下端を持ち上げて後ろを見てみたが、入口はなく、石の壁があるばかりだった。


「この文字を読まなきゃダメってこと?」

タペストリーを見ながらラドリーンが聞くと、猫が返事をするように鳴いた。