夕食は鰊(ニシン)だった。

燻製したニシンと野菜を煮込んだものと、スライスした硬いパンとチーズがラドリーンの部屋のテーブルに並んだ。

ここでは肉料理が食卓に並ぶことは、ほとんどない。

季節毎の祭日の時に鶏肉が出されるくらいで、普段はよくて塩漬肉かソーセージ、後は魚介類ばかりだ。

どこかで鶏と山羊を飼っているらしく、卵やチーズなどには事欠かない。


――ミャア


配膳を終えた<影>が部屋を出ていくと、猫は後ろ足立ちでラドリーンの脚にすがりついた。


「何か食べる?」

ラドリーンはチーズのかけらを手の平に乗せて言った。


――ミャウ、ウウウウ


「要らない? じゃあこれは?」


鰊を差し出すと、猫は飲み込むように食べた。


――ミャア


どうやら鰊がお気に入りらしい。


結局ラドリーンは、皿の中の鰊を全て猫にやってしまった。

鰊がなくなると、猫は暖炉の前に戻って毛繕いを始めた。