「バード」

ラドリーンは、ささやくように呼んだ。

『アスタリス』と呼ぶのはためらわれた。その名は、かつて神王と呼ばれた男のものに思えたからだ。

ラドリーンは、再び深い口づけを受け、アスタリスを抱きしめた。


彼は、バードだ。

海の城で、夜毎、不思議な歌物語を歌ってくれた恋人だ。

ラドリーンだけの。


あえぎ、のけ反る白い喉元を唇がすべり、漆黒の髪の上に色の変わる銀色の髪が溶け込んだ。

それは、さながらオーロラの浮かぶ夜空にも似ていたが――

誰が知るだろう?

愛の安らう枝は、恋人達だけのものなのだ。