「今?」

アスタリスが片方の眉を上げた。

「ええ、たった今」

ラドリーンはクスクスと笑った。

「あなたがわたしを''にぶい''と言った訳もね」

アスタリスは、笑わなかった。

ただ愛しげに、ラドリーンの額に口づけて、ささやいた。

「ここへ来る前に、司教と少し話した。明日、予定通り都へ向かおう。そこでお前の真実を見出だすがいい」

「真実?」

「そうだ。己れの血筋も、海の上に追いやられた理由(わけ)も、その目、その耳で確かめるといい」

ラドリーンは少し考えこみ、それからアスタリスの髪に指を差し込んだ。

「あなたも一緒に来てくれる?」

「ああ」

「よかった」

ラドリーンは上げていた手をパサッと寝台の上に落とした。

「本当は不安だったの。あなたにもう会えないんじゃないかって」

「ラドリーン」

アスタリスは、ラドリーンの瞳を覗きこむように、じっと見つめた。

「ラドリーン。俺の、夜空の瞳の姫君」