「ああ。行って来い」

アスタリスはふっと笑って、小指で弦を弾いた。

扉がひとりでに開いた。

――うん。えーと、じゃあ、しばらく帰って来ないから

リナムの声が離れて行く。

――バード、間違ったら困るから、扉に魔法かけててね

「分かった」

アスタリスは笑いを堪えるように、口元を歪めて答えた。

――えーとね、ごゆっくり

リナムが走り去ると、扉がパタンと閉まった。

「今のは何?」

ラドリーンは不思議そうに言った。

「あの子、何かぎこちなくなかった?」

「ああ――」アスタリスが笑った。「あれは、あいつなりに気を使ったのだろう」

「気を使ったって?」

「リナムより鈍いとはな」

アスタリスは笑いを含んだ声でそう言うと、寝台の端に腰かけた。


“鈍い”とはどういう意味だろう?

ラドリーンは戸惑ったが、その質問は後にする事にした。


「病気の人達はどうなったの?」

「ほとんどの者は、助かるだろう」

「ほとんど?」