「ああ……これか?」

アスタリスは、懐から小さな布袋を取り出した。

――うん。その中に瓶が入っているから、それ、あの人達にあげて

アスタリスは、袋の中から薄緑色のガラスの小瓶を取り出し、それを日にかざして見た。

「中身は何だ?」

――蜂蜜だよ。ユニコーンの角が混じってんの

「何だって?」

――ユニコーンの角。粉にしたのを蜂蜜とぐるぐる混ぜたの。お腹壊したら舐めろって、兄者が

リナムは得意気にラドリーンを見上げた。

――あの人達の病気を治すくらいの量ならあるよ

「お前、どうしてそれを持っていると、早く言わなかったんだ?」

マスタフが呆れたように言った。

――だって、誰も聞かなかったもん

「もう少し脳みそがあるかと思っていたよ」

――だいじょうぶだよ、マスタフ。騎士は腕が立てばいいんだから

「俺のじゃない」

リナムは意味が分からず、キョトンとしてる。

アスタリスが苦笑した。

「幻獣には幻獣だけの理屈があるんだろうさ――リナム、本当に貰っていいのか?」