「魂の救済に。死後は天の国に行けます」

「天の国は本当にあるのか?」

ラドリーンに分かるはずもない。だが、死にかけた男に最後の希望を与えたいと思った。

「天の国はあります。聖なる母がおられます。そこでは悩みも痛みもありません」

「そうか……俺の両親もいるだろうか? 何年も前に死んだのだが」

「ええ、きっと」

騎士は笑うかのように浅い息を吐いた。

「最後の懺悔をさせてくれ。天の国に行けるように」

聖職者でもないラドリーンにそんな資格はなかった。だが、それがどうしたというのだろう。

「お聞きします。どうぞ」

「俺は人を殺した。何人も殺した」

「人々をお守りになるのが仕事ですもの」

「戦場だけじゃない。今だって剣を持っていない者を切った。酔いつぶれている者も。女も切ろうとした。許してくれ」

「悔いて改めれば神はお許しになります」

「嘘だ。許されるのなら、なぜこんなに痛い? 苦しい。助けてくれ。許してくれ」

騎士は痛いほどの強さでラドリーンの手を掴んだ。

「お前も一緒に来い。俺の代わりに神に謝るんだ」

太い腕がラドリーンの首を抱え込んだ。逃げる間もなく締め上げられ、目の前が赤くなった。

「俺を助けてくれ。悪魔の猫が来る。追い払っても追い払っても来るんだ」