ラドリーンの目に飛び込んできたのは、倒れている男達だった。

一人、二人……六人。

剣を手にしたままの騎士、丸腰の召し使い、うつ伏せに倒れている者、カッと目を見開き苦悶の表情を浮かべている者――いずれも切り捨てられて血だまりの中で横たわっている。誰一人、ピクリとも動かない。

ただ一人、髭をたくわえた大柄な聖騎士だけは、胸に突き立てられたナイフの柄を握り締めて苦しそうにあえいでいた。

見覚えがあった。

夜に到着した聖騎士の一人だ。

少し離れたフェンスの際で、城主夫人が力なく床に座り込み、血まみれの両手をこすり合わせていた。

あのナイフは、彼女が持っていた物だろう。

「助けてくれ」

聖騎士は、途切れ途切れの声でラドリーンに言った。

いったい何ができるだろう?

治療の知識がないラドリーンにも、男の怪我が手の施しようがないくらいひどい事は分かった。


「神の御加護を」

ラドリーンは騎士の傍らにひざまづいて言った。

「御国が来たらん事を」


「神が何の役に立つ?」

騎士は皮肉っぽく笑った。