海の上の、ラドリーンがいた城もそうだったが、この城の階段も大人の男が一人やっと通れるほどの幅しかない。しかもとても急だった。

城というのはそういう造りが普通なのだろうか。

階段は一旦壁につきあたり、 直角に曲がって下へと伸びていった。

一番下はアーチ状の出入口で、その向こうに石床が見える。階段はそこで途切れているようだ。

喧騒はますます大きくなり、怒号に混じって金属音が聞こえた。

ラドリーンの胸に不安がよぎった。

「リナム?!」

姿の見えない黒猫の名を呼びながら、ラドリーンは階段を駆け下りた。

アーチを通り抜け広い場所に出る。


そこは――


テラスのような場所だった。

端の方に胸の高さほどのフェンスがあり、その向こうは吹き抜けになっているようだ。怒号は下の階から聞こえていた。

石の床に黒い液体がこぼれている。

丸太のように床に転がっているモノを見て、ラドリーンは悲鳴を飲み込んだ。


――そこは、戦場だった。