――ほらね。オイラだって難しい話、ちゃーんと覚えてるんだよ

「そうね」


ラドリーンはリナムに両手を差し延べた。

少し袖が引っ張られ、黒猫はポンと膝に飛び乗った。


――オイラはまだ半人前の妖精猫(ケット·シー)なんだ

「そうなの?」


幼さの残る物言いや仕種は、猫だからだと思っていた。が、リナムは本当に年が若いらしい。

四匹兄弟の末っ子で、体も一番小さいのだという。


――兄者達は馬鹿にはしないけど、オイラは一人前になれないって思ってる

リナムは喉を鳴らしながら、ラドリーンの膝に顔を擦りつける。

――オイラも『そうかも』って諦めてた。そしたらバードが怒ったの。『最初っから諦めるなんて大馬鹿だ』って


ラドリーンはそっとリナムの背を撫でた。


――バードの言う通りだった。オイラ、もうすぐ大人になれる。ラドリーンのお願いをあと二つ叶えるだけだもの


意味が分からず、ラドリーンは首を傾げてリナムを見た。


「あと二つ――なのね?」