「そうだと思うわ。リナムが普通の猫じゃないって知れたらそんなに大変かしら」

――大変、大変。首の皮を掴まれてポーンって投げられるならいいけど、下手したら切り殺されちゃうよ。聖騎士って妖精猫(ケット·シー)嫌いなの

「そうなの? でも……」

――マスタフは別だよ。彼、ホントの聖騎士じゃないもん


意外な話に、ラドリーンは瞬きをした。


「じゃあ、あの人は誰?」

――マスタフはマスタフだよ


リナムは口をもぐもぐさせながら、当然のように答える。

ラドリーンはクスクスと笑った。


「わたしの聞き方が悪かったみたい。あの人も霧の森の向こうから来た人?」

――誰? マスタフ? そうだよ。仕事してるって言ってた。ユニコーンの数が合わないんだって

「ユニコーン?」

――そっ。白い子馬みたいな奴

「額に長い角が生えてるのでしょう? 絵で見たことがあるわ」

――そいつ、そいつ。オイラはよく分かんないんだけど、生き物って増え過ぎても減りすぎてもダメなんだって。えーと、きん……きん……きん何とかが崩れるの

「均衡、かしら?」

――そう!


リナムは嬉しそうに笑った。