ただし、入口に図書室の踏み台を置く事は忘れなかった。

ひょっとしたら、中からは開けられないかもしれないから。


部屋の中は薄暗かった。

がらんとして何もない。

ただ、石作りの壁には棚や燭台になりそうな窪みがあったり、藁を敷けば寝台になりそうな大きな石の台があった。

よく見ると、奥の壁には暖炉まである。


どこか潮の匂いがした。


海辺の城だ。

潮の匂いがするのは当たり前だったが、それにしても他の部屋より遥かに匂いがきつい。

小さな窓はあるが、木戸はしっかりと閉まっている。


「他にも窓があるはず」

ラドリーンは呟いた。


窓、もしくは扉か。


ひょっとしたら、直接外の海岸に出られるような扉かもしれない。


ラドリーンは暖炉や石の台の周りを細かく調べた。

さっきのような仕掛けがあるかもしれない。

けれど、いくら探しても、成果は全くと言っていいほど上がらなかった。