丘の上の城で出迎えた領主夫人は、テオドロスに面差しが似た美しい人だった。

濃紺のドレスは袖と裾が恐ろしく長く、どうやって優雅な立ち居振る舞いをしているのか不思議だ。

夫のアルフレッド卿はとてもが人当たりのいい人物だったが、奥方の方は上品で堅苦しい。

<侍女>といい勝負かもしれなかった。

テオドロスが挨拶をすると、奥方は微笑みながら頷いた。

久しぶりに会った弟ならば、もっと嬉しそうにしてもいいのにとラドリーンが思っていると、奥方と目が合った。


あからさまに向けられた嫌な顔――


「誰? いいえ、答えなくていいわ。あの女の娘ね」

奥方は凍りつきそうな声で言った。

「生きていたのね。忌ま忌ましい黒い髪と目。あの女にそっくり」


「ローナ、客人に失礼だぞ」

アルフレッド卿が穏やかにたしなめた。


「客人? 客人ですって? そんな話は聞いていないわ。わたくしの城であの魔女の娘をもてなせとおっしゃるの?」


「ローナ!」


「あの女は、わたくしから何もかも盗んだのよ。愛も、地位も、名誉も!」

狂気を宿したような青い瞳がラドリーンを見据えた。

「泥棒! 泥棒! 泥棒!」