「ドラゴンだ!」

水夫達が空を見上げながら歓声を上げた。

つられてラドリーンも上を見た。

岸壁の上空を、黒っぽい巨大な影が滑るように飛んで行く。

帆のはためく音だと思ったのは、翼を動かす時の音らしい。


本物のドラゴンを見るのは初めてだ。


「神王の御加護を!」

「御加護を!」


口々に祈る男達に、テオドロスは眉をひそめた。

「彼らは異教徒ですか?」


「いや、むしろ真面目に教会に通う信心深い民だ」

アルフレッド卿が言った。

「だが昔から、ドラゴンが飛ぶのは吉兆だというからな。神王の乗り物だと乳母がよく言っていた」


「くだらない迷信です」


「まあ大目に見てやれよ。海に生きる者は、常に死と隣り合わせだ。持ちうる限りの『ツキ』を求めたとて、誰が責められる?」


「我等が神に幸運を祈ればよいでしょう」


「いかにも聖騎士らしい台詞だな」