彼と彼女の場合

「愛果にそう言ってもらえると嬉しいよ。この部屋は就職してすぐに買ったんだ。いつかここで家族と暮らしたいと思ってね」

「家族…ですか?」

「そう。当時は結婚する気もまだまだなかったし、相手もいなかったんだけどね。ここを見たときになぜか幸せな家族が想像できたからここに決めたんだ」

「そうだったんですか。確かにすごく素敵なところですよね」

「まぁ結局何年も一人のままなんだけどね」