「私は…正直に言うと思い出したいとは思わない…でもみんなの手が暖くて…あぁ私一人じゃないんだな、頑張らなきゃなって思うんです。」





「そうかそうか。
皆で頑張ろうね。」

医者はそう言って柔らかい笑顔を見せた。



「それで考えたんだかね、君が記憶を失った原因と同じ事をすればいいんじゃないか。」

「と、いいますと?」


「例えば君は階段から落ちて記憶なくしたんなら階段から落ちる。命の危険もさらされる可能性もあるが、これで回復したケースもなくわない。どうだ?
君しだいだ。」



命の危険もある。確かにそうかも知れない。

頭に強い打ち身があったと医者は言っていた。さらに強い打ち身をつけたらどうなるか。記憶をうしなうどころじゃないかもしれない。



それでも…



例え死んだとしても…


少しの可能性があるのなら…



「やります!」




そして美鈴は走り出した