朝比奈砂裕。

俺の高校時代の元カノ。
「ありがちだな」とか言わないでくれ。
さゆから手紙なんて、
こんなことあり得ないんだから。

さゆに初めて会ったのは中学3年の冬。
高校受験の受験会場でたまたま隣だった。

消ゴムを忘れて焦っていた俺に
なんでもないように一つ消ゴムをくれた。

そんなかわいい子ではなかったけど
愛嬌のある顔はすこしかわいくみえた。

「優しくされてドキドキしたんだよな、俺もガキだったよな」

初めて会話をしたのは高校1年生。
同じクラスになって1週間くらいしたころ。

たまたま、さゆが俺の机の前を横切ったとき。
急に、
「中村くんって左利きなんだね」
と言ってきた。
返事に困っていると、
「あたしのこと覚えてる?」

「覚えてる!消ゴムありがとう」

「あたし、朝比奈砂裕。覚えてね」

「朝比奈、覚えた。俺は」

「中村圭くん。知ってるよ」

ガキながら、
こいつ俺に気があるんじゃないか
なんて思った瞬間だった。

それから、どちらからともなく話しかける関係になって、7月の終業式で告白された。

実際、
なんで俺が
とは少し思った。

どちらかと言えば不細工だし
どちらかと言えば背はちっちゃいし
どちらかと言えば太ってる。

でもそんな俺を好きって言ってくれてるんだから、深く考えないようにした。