実家を出たのは大学入学と同時。
もう7年目になる。
明かりのない冷たい部屋に入るのは
もうなんとも思わない。
でもたまに、こんな風に慣れてしまった自分が
どうしようもなく可哀想に思う。
郵便受けから新聞を取って家の明かりを付けていく。
いつか仕事に慣れて余裕ができたら
家族がわりにペットを飼おうと思って買ったアパート。
仕事には慣れたものの
いざ飼うとなると財布の紐は固くなり、
未だに飼えずにいる。
「新聞も止めるかな、どうせテレビでみるし」
新聞を広げると挟まっていたらしい手紙が出てきた。
「なんだ、また誰かが結婚したか?」
ぼやきながら手紙を裏返す。
『中村圭様
朝比砂裕より』
