「中村くん」

「あ、待って!」
そう言いながら中村くんはオカのうしろにまわった。

「オカから。俺、ちょっと後ろにいるから」


「…わり。俺まで」
目の前にたったオカは、
昔と変わらない。
背が高くてイケメン。
落ち着いていて大人っぽいけど、
コーヒーが嫌い。

「あのさ、」

「うん」

「…ずっと好きだった。
ヒナが圭と付き合い初めてから、
すぐに好きになった。

俺がヒナのことをヒナって呼ぶのは、
俺だけ特別だって思いたかったから。

俺が圭にヒナの気持ちを伝えなかったのは、
二人が上手くいってほしくなかったから」

「オカ」

「ごめん」

「ありがとう、オカ。うれしい」

知ってたよ、オカ。
ずっと大事に思ってくれてたでしょ。
ずっと優しかった。

あたしがオカの気持ちを知ってて、
誤魔化してること知ってたでしょ?
それでも、オカはきづかない振りしてたんでしょ?

「なあ、一回だけ、名前で呼んでくれないか?


これが、オカの、あたしに対する最初で、
きっと最後のお願いだ。

「ありがとう、稔。あたしも大好き」

オカは満足そうに笑った。

「砂裕、元気でな」