2020年 冬
「なんで交互に呼び出すんだろうな」
本当に不思議そうに圭は聞く。
バカだけど、こういうところが圭のいいところだ。
「ヒナからの手紙、全部読んだのか?」
いきなりの話題に驚いたのか、
圭の動きが一瞬止まる。
「引っ越すって書いてあったか?」
「なんでしってんだよ」
「ヒナに会った。お前、会いに行かないのか」
「いや、だって」
「会いたいんだろ」
「でも俺、オカの気持ち全然知らなかったし」
「なんだよ、一丁前に気でも使おうとか思ってんの?」
図星だったのか、
圭は黙ってビールを飲む。
こういうやつだから、言わなかったんだ。
自分の気持ちを優先できないやつだから。
「今更気使おうったっておせーよ。
俺はいいんだよ」
「でも」
「あのな、ヒナはすっごい勘がいいんだ、
誰かさんと違って。
ずっと俺の気持ちなんて気付いてたんだ。
だから俺にお前の話をした。
圭といられて幸せだって言うために。
俺の気持ちに応えられないから、
お前と三年間付き合ったんだ。
俺が告白なんかしたら、俺と圭の仲が悪くなるから。
メールじゃなくて手紙にしたのも、
俺がアドレスを知りたいなんて言ったら
大変だからだ。
ここまでされてるのに告白なんてできるかよ」
あーあ、言っちまった。
こんなカッコ悪いとこ、圭に見せちまった。
でも、俺はいいんだよ。
もういいんだ。