2020年 冬

「さゆから手紙が来た」

ついこの間飲んだばかりなのに、
突然呼び出された理由はこれか、と納得した。

「ああ、よかったな」

「なんでこの前言ってくれなかったんだよ、会ってたんだろ、さゆと」

「手紙読んだのか」

「まあな」

「どうだった」

「どうって、よくわかんね」

「よくわかんねえってお前」

「だって、俺振られたんだ。今更さゆは何したいんだと思う?」

「しらねーよ、自分で考えろ」

圭は今でも当時のヒナの気持ちは知らない。
鈍感すぎる圭にずっとぶつかっていった、
それでもかわされてしまうヒナの気持ちを。

「さゆが離れていったんだ。俺どうしたらいいんだよ」

「どーしたいんだよ」

「どうって、よくわかんね」

俺さ、圭。
今まで結構お前に気使ってきたつもりだよ。
お前が俺を気に入ってくれたから。
でも、もういいと思わね?

「じゃあヒナは俺がもらうな」

「は?」

「なんだよ、よくわかんねえんだろ?」

「え、いや、嘘だろ?」

「なんでだよ、ほんとだよ」

「え、オカ、さゆのこと好きだったの?」

「ほんと、お前ってお気楽な奴だよな。
好きだったよ、昔からずっと」

固まった圭をおいて店を出た。
ずっと、10年間仕舞っておいた宝物だったのに。
「あーあ、言っちまった」
冬の、寒い空に呟いた。