2020年 冬
中村圭 23歳 サラリーマン
こんな言葉に出会った。

「これってどういう意味だと思う?」

「どうって、言葉通りの意味だろ」
居酒屋で隣に座る岡野稔は
相変わらずめんどくさそうに話す。

「そーじゃなくてさ」
俺は岡野に詰め寄る。

「①足踏みするくらいなら歩け
②とりあえず足踏みはしとけ」

「断然①だろ」
言い切る岡野。


やっぱりそうだよな。
そーゆう前向きじゃないと意味ないよな。

「なにその言葉」
興味なさそうに聞く岡野。

「ちょっとな」
適当に誤魔化しておく。

実際、偶然本屋で手に取った本だった。
なんとなく気に入って覚えただけの言葉。

居酒屋からの帰り道、
今もなお減っているのであろう靴の底を
ぼんやりと考えながら帰った。