眠った彼女はよく喋る





「兄さん、すごく嬉しそうだった。ベロベロのタヌキが契約を結んでくれたって。沙夜ちゃんは夫人と仲良くなれたって」



「……」



「それに、わたしを褒めてくれたって」



「褒めた…?」



「そう。まだまだ幼い少女が広い屋敷に1人で夜遅くまで留守番していて、学力も優れていてスゴいなって。


相当嬉しかったみたい。初めてだったから」



「初めて?」



「えぇ。わたし、隠されて育ったようなものだから。母と父は本当に愛しあってるけど、わたしの存在は認められてない。


……唯一認められているのは、身体だけ」



ふ、と表情に陰が差した涼川の手に触れようとして、やめる



涼川はユーレイだ



視えても、触れることはできない