「…わたしは大丈夫。だから傷つけないで」
そう言って俺の手にキスを落とし、微笑んだ涼川がすごくキレイで
自分の頬を伝う雫に気付かなかった
「泣いてしまってごめんね」
「いえ」
「婚約の話が聞きたいんだよね?」
「…はい」
「君の父親、一さんにはとてもよくしてもらってるんだ。あの男を社長から落とすのも、僕の仕事についても、全部手伝ってもらってね。
沙夜も由憂さんと買い物行ったり、美織のことを相談したりして。まぁ、聞いただろうけど、一さんが家に来た日のこと」
「あ、…はい。その日はいつもより早く父が帰ってきて母に土下座したんです。パーティーでそのことを初めて聞かされて…」

