「霧咲?」 目の前にいる龍斗の声で我に返る。 世界が黒い。 ぐるぐると廻っている。 「おい、顔青いぞ?」 龍斗が手を伸ばしてくる。 その手が、あの時のあの情景に重なった。 「さ、っわらないで…!」 反射的に腕をはたく。 いたたまれなくなって屋上を飛び出した。 龍斗が自分を呼び止める声など気に留める 余裕もない。 あの時の光景に意識を持って いかれないようにするので精一杯だった。