―彼氏と彼女―





「広瀬君が傘も差さずにずぶ濡れで学校に来てて……みんなに笑われてたけど、私は知ってたの。

 子犬に傘をさしてあげたことを―――」




 ………“恋”に変わった瞬間を、今でも覚えてる。




 私の言葉に、ずっと表情を変えなかった彼が、一瞬、目を大きくした。




 彼がいつも表情変えないその理由を、私は気づかないフリをしてきたんだ。


 だから、こんなに遠回りしちゃったんだね、私達。






「その優しさに、私は惹かれたの。

 それからずっと、あなたを見てた」