―彼氏と彼女―





 私の手からスルリと携帯が抜けると、後ろから声が聞こえた。




「お前、誰?

 さっき沙智といた男か?」



 振り向くと、私の携帯を耳に当ててる広瀬君の姿。



「は? ……ああ、沙智は俺の女だけど?」


 淡々と話してる広瀬君に、私はしばらく止まっていた思考が動き始める。



「ひ、広瀬君…! 電話返して!」


 彼との身長差のせいか、うまくかわされてしまう。

 彼は、私を鋭い瞳で見下ろすと、


「……人の女に手ェ出してんじゃねぇ」


 言って、通話を終わらせた。