彼は私を真っ直ぐに見つめてる。




 私は、息を止めていたのかもしれない。




「あっ」


 立ち止まった私に、後ろから人がどんどんぶつかってくる。

 邪魔だと舌打ちが聞こえた瞬間、慌てて人波から抜け出た。



 人混みから外れると、彼は私の方へ歩いてきた。





 ――――どうしよう…っ





 彼は私の前に立ち、無表情で見下ろす。


 私はいたたまれなくて、咄嗟に俯いてしまった。