「たかおみ……」



 さっきの女の子の呼ぶ姿を思い出したのか、


「あ――それでタカ君か…」


 空を仰ぎ見た彼。





 付き合い始めてすぐに、彼は私を『沙智』と呼ぶようになった。


 『宮田は面倒だから』と言う理由でも、嬉しかった。

 呼ばれる度にドキドキして……。


 でも、私は彼を下の名前で呼ぶなんて恥ずかしくて出来なくて。彼も私がずっと苗字呼びでも何も言わなかったし……。


 ……なのに。

 彼女には呼ばせるんだね。





「……私は下の名前で呼ばせてもらえなかった」